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行き止まりのむこう側

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Synopsis

水は自由に動く。
どこで私が終わり、海が始まるのだろう?

2011年の大津波で最愛の妻を失った高松康雄さんは、妻を奪ったその海で、真っ向から喪失と向き合った。「行き止まりのむこう側」は、自然の中にある人間の魂の並外れた回復力を見つめていく。

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イスラエルが贈る「東北イニシアティブ」
短編映画プロジェクト

「行き止まりの向こう側 」は、イスラエルと日本の東北地方との深い繋がりから生まれた特別なプロジェクトです。
東日本大震災後、世界最高水準の緊急対応力を誇るイスラエルは、いち早く医療チームを派遣し、東北の被災地を支援しました。また撤収時には、南三陸町の病院に医療機器を寄贈しました。イスラエル医療団と東北の人々との密接な交流は深い絆を生み、以後も続いています。
この11年間、イスラエルは様々な形で被災地への支援を続け、多くの被災者の方々と交流してきました。震災10年を機に、イスラエルは東北への支援を強化し、この地域の持続可能な将来の創造に貢献し、友情と連帯を深めるために、特別な資金の投入を決定しました。その一環として、駐日イスラエル大使館は、芸術的なクリエイションを含む、この地域を拠点とした一連のプロジェクトを開始しました。本作品 “行き止まりのむこう側”はその一つです。
この作品は、宮城県女川町に住む高松康雄さんが、津波により妻を亡くし、今日まで行方不明になっているという個人的な物語を伝えており、イスラエルと日本両国の映画監督、音楽家、作家が参加した文化的コラボレーション作品です。この史上最大級の地震により、2500人以上の方々が現在も行方不明のままになっています。この映画は、彼らの物語です。

プロデューサーからの Message

2021年のコロナウイルスによるロックダウンの期間中、このプロジェクトに関わるすべての人が家に閉じこもり、孤立感を味わっていたとき、「行き止まりのむこう側 」は非常に有機的な形で生まれました。東日本大震災から10年が経とうとしている時期でした。 そこで私は、イスラエルの作曲家でありジャズピアニストでもあるシャイ・マエストロに連絡を取り、このプロジェクトの一環として、この機会を記念した特別な文化プロジェクトを立ち上げようと提案しました。するとシャイは、即座に承諾し、津村将子、エリック・シライの両監督とのコラボレーションを提案してくれました。 両監督が、震災から3年後の同じ地域を舞台にした長編劇映画「Umi」を制作中であることを、シャイは知っていたからです。バーチャル空間に集まった私たちは、何か意味のあるものを一緒に作ることができるチャンスだと興奮しました。 その話の中で、私たちはイスラエルが日本に緊急援助隊を派遣した最初の国の一つであることを思い起こし、全員がこのプロジェクトに特別な意味を感じていました。
将子とエリックは、高松康雄さんの実話を基にした短編ドキュメンタリー映画を制作することを提案しました。高松さんは、2011年の津波で亡くなった奥様を捜すため、パンデミックの最中でも毎週のようにダイビングをしていたそうです。高松さんの体験や前向きな姿勢は私たちの心を打ち、この困難な時代に希望を与えることができればと思い、彼の話を紹介することを決めたのです。 そして、このプロジェクトに、息子を失った悲しみを経験したイスラエルの著名な作家、ダビッド・グロスマン氏に参加を依頼し、より普遍的なテーマを目指しました。高松さんの話に感動したグロスマン氏は、彼の著書『Falling Out of Time』から、失ったわが子のために旅立つ両親の物語を引用することを提案しました。この映画の音楽はシャイ・マエストロが担当し、日本・イスラエル出身のチェリスト、塚本ジュピロ真由と共同でレコーディングを行いました。シャイは東北の皆さんのために特別に美しい楽曲"nowhere to go but everywhere"を作曲しました。この音楽が映画と同じように皆さんの心に触れることを祈ります。
「行き止まりのむこう側」では、 一人の男性とその最愛の妻の非常に個人的な物語を通して、私たちのより広いコミュニティの継続的な悲しみと回復力に触れています。2011年の東日本大震災で大切な人を海で失った2500人を超える方々の家族は、いまだにその悲しみから解放されることはありません。この映画は、古来からのの伝統と、スピリチュアルな自然に恵まれた素晴らしい風景の中で、ひとりの魂の繊細な旅を捉えようとしたものです。
この映画の繊細さ、遠く離れた地域の映像、音、言葉が、世界中の多くの人々の心に響くことを願っています。

アリエ・ロゼン ー 前イスラエル大使館文化・科学技術担当、プロデューサー

 
監督からの Message

「行き止まりのむこう側」は2020年にグローバル・パンデミックが始まり、見える世界ががらりと変わってきた時、私たちがマントラのようにつぶやいていたことばです。こう唱えると、肉体的にロックダウンの中にいても、私たちの精神には常に無限の可能性が宿り、自由であることが再確認できたからです。そんな時、駐日イスラエル大使館から東北大震災の犠牲者への追悼のため、イスラエル人と日本人のアーティストのコラボレーションのプロジェクトの話を頂き、高松康雄さんの類稀な実話を映像化する時がきたのではないかと話し合いました。高松さんは津波で最愛の奥様を亡くされましたが、その大きな喪失と向かい合うために、ダイビングを習得し、奥様を奪って行ったその海に潜り、彼女を探しに行かれました。限りなく続く潮の流れに身を任せ、捜索を続けるうちに、思いがけない癒しをそこに見つけていったのです。先が見えない脆い時代を生きる中、人間と自然の繊細な関係がもたらすもの、私たちの精神の回復力を思い出す印として「行き止まりのむこう側」を制作しました。

-津村 将子、白井 エリック

 
Beginning
高松さんとの出会い

4年前、製作準備中の長編劇映画Umiのリサーチで宮城県沿岸を旅していた時、ニューヨークタイムズマガジンの「僕には探し続ける選択しかない」という高松康雄さんのことが書かれた素晴らしい記事を見つけ、ピュアで稀有な高松さんのストーリーに心を強く動かされました。これがUmiの脚本のベースになると感じ、高松さんが7年前にダイビングを習い始めた、女川のダイビングショップ「ハイブリッジ」に連絡をし、高松さんとつないでもらったのです。優しく静かな空気を纏う高松さんに、奥様についての質問をするのは非常識なのではないかと思い、ダイビングのことについてばかり質問しました。高松さんは、私たちの質問にシンプルに答えますが、そのあとはちょっと居心地の悪い沈黙に包まれたものでした。

数年をかけて、東北を訪れるたびに高松さんと会い、少しずつ震災前の奥様のこと、彼女の願いを叶えたいと言う思い、そしてダイビングが人生で大切なプロジェクトになったことを話してくれました。パンデミックにも関わらず高松さんが海に潜り、奥様を捜索され続けていることを知ったことが、「行き止まりのむこう側」を制作したいという意思につながったのです。

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プロダクションについて

この4年間、長編映画の準備のため、東北沿岸の無数のロケーションを訪ね、撮影のためのスカウトをし続けていました。祝詞のシーンを撮影した雄勝の崖の上にある荘厳な白銀神社や、練り歩く鹿を撮影したマジカルな金華山も、いつかはここで撮影をしたいと思っていた場所です。また、水中撮影をした、女川の冬の海は海流が厳しく、視界が限られ、水はとても冷たく、相当な経験と技術力が求められます。コロナ禍の上に天候不順や地震などもあり撮影日程を随時変更しながら、ハイブリッジと東京の水中撮影チームの絶大な協力により、なんとか敢行できました。撮影は日本、編集はドイツとニューヨーク、音楽と詩はイスラエル、色補正とサウンドミックスはニューヨーク、と世界を跨いでポストプロダクションを行っています。また、一番長い時間を過ごしたZoomも、重要なロケーションのひとつといえます。

Director
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津村 将子
監督・プロデューサー

約20年前に夢を追って東京からニューヨークに移住。2003年にImakoko Media, Inc. を東京とニューヨークに設立し、インディペンデント映画製作を開始。写真家・荒木経惟のドキュメンタリー「アラキメンタリ」(2004)を編集、ホノルル映画祭でベスト編集賞、ブルックリン映画祭で観客賞を受賞。その後、33年間の拷問と投獄を生き抜いたチベット僧・パルデン・ギャツォの長編ドキュメンタリー映画を監督・プロデュースし、2008年にトライベッカ映画祭、IDFA、釜山映画祭など世界中の映画祭で公式上映後、ミラダス映画祭(スペイン)で審査員特別賞を受賞。2010年には日本全国のアートシアターでも劇場公開された。最近プロデュースしたドキュメンタリー映画『The Birth of Saké』はパームスプリング映画祭でベストドキュメンタリー映画賞を受賞したほか、アメリカの権威あるPBSチャンネルのPOVプログラムで放映され、世界中で数々の賞を受賞した。

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白井 エリック
監督・編集・撮影監督

エリック・白井はアメリカに生まれた日系二世。未だに彼の人生に大きな影響を与え続ける母親の強さと意志力によって育てられた。ニューヨークと東京を往復しながら、映画、絵画、そして写真を媒体として活躍するビジュアルアーティスト。ドキュメンタリー作品、テレビ、コマーシャルなどで世界中を旅しながら精力的に作品を作っている。最近では石川県の酒蔵での蔵人たちの生活を撮影した監督作品 The Birth of Sakéが、2015年のトライベッカ映画祭で最優秀ドキュメンタリー監督審査員特別賞を受賞した。この他にカリフォルニアのパームスプリングス国際映画祭ではベストドキュメンタリー賞を受賞し、世界各国の映画祭で合計10の賞を受賞した。現在映画はNetflixとiTunesでオンライン配給されている

 
 
Music
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ⓒCaterina di Perri

シャイ・マエストロ
 作曲家 

計6枚のアルバムをバンドリーダーとしてリリースし、キース・ジャレットやチック・コリアなどを世界に出した、ドイツの著名レーベルECMのアーティストでもあるシャイは、世界をリードするジャズピアニストであり、作曲家である。主にトリオ作品を作り、クリス・ポッター、ジョシュア・レッドマン、マーク・ターナー、東京フィルハーモニー交響楽団、BBC交響楽団とのコラボレーション、そしてECMの伝説的なプロデューサーであるマンフレート・アイヒャーとの継続的な関係を通し、紡ぎ出されるメロディー、そして時には真っ直ぐな感情に積極的に寄り添いながら、一連の楽曲を生み出し続けている。イスラエルで生まれ育ち、幼い時から中東音楽や様々な民謡、クラシック音楽とジャズに触れてきた。リンカーン・センター、ビレッジ・ヴァンガード、ブルーノートなどで演奏しながら、アヴィシャイ・コーエン・トリオの元メンバーとしてマーク・ジュリアーナと共演、基盤にあるクラシック音楽のトレーニングに、彼が持つ偉大なアメリカの楽曲への愛を融合させながら、ハーモニックな室内楽のパレットと共に即興の自由とそのスピリットを観客に届け続けている。 
www.shaimaestro.com

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ⓒGeorgia&Me

塚本 シュビロ 真由
チェロ演奏

日本人とイラク系イスラエル人の両親のもと、イスラエルで生まれた真由は、6歳の時にチェロを始めた。18歳で伝統的中東音楽を発見し、そのパワーと美しさに魅了され、このスタイルに焦点を当てることを決めた。それ以来、アラビア、トルコ、アゼルバイジャンの伝統を通し、チェロと共に音楽の旅を続けている。

Special Thanks
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ⓒClaudio Sforza

ダヴィッド・グロスマン
作家

1954年エルサレム生まれ。同世代のイスラエルを代表する作家の一人。11冊の小説、5冊のノンフィクション、1冊の短編集のほか、多数の児童書、子ども向けオペラ、演劇を執筆し、国際的に高く評価されている。作品は『ニューヨーカー』誌に掲載され、世界45カ国語に翻訳されている。
2010年にフランクフルトのドイツ書籍協会平和賞を受賞、他にもイタリアのカルカリ財団から生涯功労賞、フランスのメディシス賞(翻訳文学)、ゲシュヴィスター・ショル賞(ドイツ)、サピール賞(イスラエル)、Premio per la Pace e l'Azione Umanitaria 2006(ローマ市/イタリア)、2007年ステラ・ソリダリータ・イタリアーナ賞、2007年イスキア国際ジャーナリズム賞、芸術文化勲章シュバリエ(フランス)、マン・ブッカー国際賞(英国)、バーマン文学賞(スウェーデン、2021年)など、数多くの賞を授与されている。


<主な代表作>

WHAT NINA KNEW (Fiction)
A HORSE WALKS INTO A BAR (Fiction)
FALLING OUT OF TIME (Fiction) 
UNTIL THE END OF THE LAND (Fiction)
IN ANOTHER LIFE (Fiction 2 Novellas)
SOMEONE TO RUN WITH (Fiction)
YOU SHALL BE MY KNIFE (Fiction)
THE ZIGZAG KID (Fiction)
THE BOOK OF INTIMATE GRAMMAR (Fiction)
(映画「僕の心の奥の文法」として上映され2010年東京国際映画祭グランプリ受賞)
SEE UNDER: LOVE (Fiction)
THE SMILE OF THE LAMB (Fiction)
JOGGER (Short Stories)
RIKI’S KINDERGARDEN (Play)

TO SHOOT A PIGEON (Non-Fiction)
WRITING IN THE DARK (Essays)
DEATH AS A WAY OF LIFE; Ten Years After Oslo (Essays)
「死を生きながら」(みすず書房)
SLEEPING ON A WIRE (Non-Fiction)
「ユダヤ国家のパレスチナ人」(晶文社)
THE YELLOW WIND (Non-Fiction)
「ヨルダン川西岸」(晶文社)

 

だが 肉体から魂が引き離されるような—
この孤独のうちで—
わたしは (ほとんど)
自身から引き裂かれて、そこでは
わたしは ひとりではない、
もう、ひとりぼっちでは ない
もう、あのときから—
そして わたしは そこでは ひとりでは ない、 
たったひとりでは 決して ないのだ

ダヴィッド・グロスマン「時から落ちて」(2014)より
 

 
 
Staff

監督:津村 将子、白井 エリック

音楽:シャイ・マエストロ

プロデューサー:アリエ・ロゼン、津村 将子​

編集:カタリナ・フィドラー、白井 エリック

チェロ演奏:塚本 シュビロ 真由

助監督:田澤 裕一

撮影監督:白井 エリック

水中撮影監督:千々松 政昭

水中撮影助手:荒井 浩、河瀬 経樹

録音:岸川 達也、 島香 望

サウンドデザイン+ミックス:One Thousand Birds

水中撮影サポート:高橋 正祥、飯田 紗世、折原 忠夫

撮影アシスタント:島香 望

グラフィック:イナット・ガビッシュ

カラー:ナット・ジェンクス

ストーリーボード:パトリシオ・ヒホン

資料映像:岩手県宮古市提供、原 吉憲、その他の皆さま

スペシャルサンクス:ダヴィッド・グロスマン、デボラ・ハリス、宮城ダイビングサービス ハイブリッジ、小岩 秀太郎、村岡 賢一(行山流水戸辺鹿子躍保存会)、岩手県宮古市、マイク・ビンドラバン、内田 由紀、母袋 夏生、キラ・マックナイト

出演:高松 康雄

宮司:千葉 修司

鹿子躍:小野寺 翔、佐藤 裕、小林 岬太郎

プロダクション:Imakoko Media, Inc.